MIS(最小侵襲手術)

MISによる人工股関節手術 人工股関節で用いられる手術アプローチはいくつかあります。
股関節はさまざまな筋肉に覆われている関節であり、どの筋肉の間から手術をおこなうかで手術アプローチが異なります。
人工股関節手術の70%以上で最も多く用いられている後方アプローチは、大殿筋を縦割し、中殿筋の後方より侵入し、短外旋筋群を切離しておこなわれますので、真の意味ではMISではないと考えられます。
股関節手術においてMISとされるアプローチは、ただ単に皮膚切開が小さいということではなく、いかに股関節周囲の筋肉を傷めることなく手術がおこなわれるかが重要であると考えられております。
現在、私は中殿筋の前方と筋膜張筋との間から侵入する前外側アプローチを用いて手術をおこなっております。
このアプローチにより股関節機能で最も重要とされる中殿筋を完全に温存することが可能であり、また人工関節の後方脱臼を制御するための重要な役割を果たす短外旋筋群や後方の関節包も温存することが可能になっております。
7-9cmの小さな創で手術が可能ですが、創のみを小さくするための手術ではなく、体形や変形に応じて筋肉を温存するために創を延長することもあります。
仰臥位手術 多くの施設では患者様の体を横向きにして行う側臥位手術が行われております。
手術視野が良くオーソドックスな良い方法であり、私も変形の強い関節や再置換術など難易度の高い手術の際に用いております。
現在、私がおこなっている初回手術の95%の手術では仰臥位といって普通に上向きに寝たままで手術をおこなっております。
この方法のメリットは、骨盤など特徴的な骨の隆起などを直接確認することができるため股関節の位置をより正確に手術中に知ることできる為、人工関節の正確な設置に非常に有用であることです。
また両方の足の位置も同時に確認することができ、変形により生じた脚の長さをより正確に合わせることが可能です。
関節包および靭帯温存手術 学会における最近のトピックのひとつである股関節を包み込む関節包や靭帯をできるだけ温存する手術に取り組んでいます。
手術の難易度はさらに上がりますが、温存することによりさらに生理的な股関節機能の再建が可能になると考えております。
具体的には股関節周囲の生理的な緊張を得ることにより脚の長さの調節などを正確に行うことが可能で、そのことでより安定した人工関節手術を行うことができ、脱臼のリスクを0に近づける可能性があると信じておこなっております。